PFI・PPPとは
「PFI」とは
PFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアティブ)とは、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るという考え方です。
サッチャー政権以降の英国で「小さな政府」への取り組みの中から、公共サービスの提供に民間の資金やノウハウを活用しようとする考え方として、PFIは1992年に導入されました。PFIの考え方は英国で生まれた構想でありますが、これに類似した公共事業分野への民間参画の取組は世界各国においても行われており、PFIは「小さな政府」や「民営化」等行政財政改革の流れの一つとして捉えられるものです。VFM (ヴァリュー・フォー・マネー)はPFIの基本原則です。
PFIは過去に日本国内では、ほとんど例のなかった本格的なプロジェクトファイナンス導入へもつながるものと期待されています。ただし、PFI事業は幅広い分野で検討されるべきものであり、PFIの手法の適用しやすい分野から導入を進めて行くのがのぞましいでしょう。
「PPP」とは
公民が連携して公共サービスの提供を行うスキームをPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ:公民連携)と呼ぶ。PFIは、PPPの代表的な手法の一つ。
PPPの中には、PFI、指定管理者制度、市場化テスト、公設民営(DBO)方式、さらに包括的民間委託、自治体業務のアウトソーシング等も含まれる。
「VFM」とは
VFM (ヴァリュー・フォー・マネー)とはPFIの基本原則の一つで、一定の支払に対し、最も価値の高いサービスを提供するという考え方です。公共サービス提供期間中にわたる国及び地方公共団体の財政支出(適切な割引率により現在価値化された総事業コスト)の軽減が図られ、あるいは、一定の事業コストの下でも、経済・社会への変化に対応したより水準(質・量)の高い公共サービスの提供が可能となることがPFIでは必要です。ただし、これからの公共サービスは、より質が重視されるものと考えられますので、必ずしもコストの低い事業者のものがよいということではありません。また、PFI事業による公共サービスの提供は長期にわたるものであり、事業が開始された後の維持・管理またモニターリングといったものが、本当の意味でVFMを計る大きな要素となり重視しなければならないでしょう。
「PFIとプロジェクトファイナンス」
PFIにおいて最も注目すべき点はファイナンスである。通常、プロジェクト事業会社からの返済が滞った場合親会社からの保証を実行し、融資金の返済に当てるか或いは、担保として供与されていた土地・建物を売却することによりその返済原資を確保するという考え方であり融資の判断はそれらの担保価値を前提としている。プロジェクトファイナンスにおいては、事業のキャッシュフローの内容を分析しキャシュフローの確実性、即ち融資金の返済原資の確実性と考える。又、そのキャッシュフローを生み出す契約書の内容、契約書相互間の合法性等を融資の担保として重要視することとなる。
プロジェクト・ファイナンスとは当該事業の為に借用した資金を当該事業で生み出す収入で返済することができる事業かどうかを見極めることである。
英国においては、公共部門と民間事業者がその交渉過程で利用した契約期間をカバーするファイナンシャルモデル(資金収支表、損益計算書、貸借対照表)を契約書の一部としている場合もある。建設期間、完工後の運営期間、毎年当初のファイナンシャル・モデルで示されている数値と実際の数値との差を分析するのに活用する。その差異が将来の経営(財務)にどのような影響を与えるかを分析することにより、早い段階で事業の問題を発見し解決を図る手法である。
プロジェクト・ファイナンスは日本の地方自治体にとって極めて重要なコンセプトを示唆するものである。即ちPFI事業がそうであるように、地方自治体も可能な限り自治体としての将来を見通す資金収支表、損益計算書、貸借対照表をもって経営すべきという点である。
プロジェクト・ファイナンスは収入と支出の予測の結果である。その収入と支出に多大な影響を与えるのがリスクである。リスクを見つけ出す作業がプロジェクト・ファイナンスにとって最も重要なプロセスである。
設計、建設、完工、維持、管理、運営の期間、公共部門に当該公共施設を返還するまでの期間に一体いくつのリスクがあるのか。金融機関AがPFI事業を分析した結果百リスクを取り出した。金融機関Bは同じPFI事業から五百のリスクを見い出した。リスクはすべてコストで表現できる。リスクは将来新たなコストを生み出す予備軍なのである。従い五百のリスクのコストを想定し、そのコストが発生した場合でも融資金が返済されなければならないのである。当然その為にも公共部門と民間部門の間でリスク分担、即ち将来発生するかもしれないコスト分担を明確に契約上で規定しておかなければならないのである。これにより安心して融資可能となる。しかし、もし百しかリスクを見い出せなかった場合、もし残りの四百のリスクの内のいくつかが実現してしまった場合、事業会社の返済能力に大きな問題が生じるかもしれない。従いリスクの見極め、そして公共部門とPFI事業者との間におけるリスク分担がプロジェクト・ファイナンスの成功の鍵となる。
プロジェクト・ファイナンスは決して難しいものではない。特にサービス提供型PFIにおいては返済原資を公共部門に頼るものであることより、そのリスクの度合は軽減されているといえよう。PFI事業では親会社の保証に頼ることなく事業のキャッシュフロー、契約書の枠組み、当該事業に係る土地・建物を担保としてプロジェクト・ファイナンスの実現が望まれる。