デジタル動向・マンスリー・ニューズレター

第4回 DXを実現させる技術・サービスを提供する企業事例

1.はじめに

これまで、2回にわたり、DXによってデジタル変革を行った、サービス業、製造業における企業事例を紹介した。データを的確に利活用するデジタルプラットフォ-ム(データ連携基盤)を用いて、ビジネスモデルを変革、事業ドメインを再構築し、新たな顧客価値を提供し、さらには業界の改革も試行するようになった企業の事例を紹介した。

今回からは、DXを行う企業、組織に対し、それを実現させる技術、サービスを提供するユニークなDX関連企業を紹介していきたい。


2.DX関連企業①:Tableau Software

Tableau Software(Tableau)は米国のソフトウェア会社である。日本を含む全世界で事業を展開。ビジネスユーザー向けにデータの視覚化見える化を行う分析ツール(BI(ビジネスインテリジェンス)ツール)を提供し企業のDXを支援する。おもな製品は、データ検索・分析ツール、データ管理、セキュリティ機能を備えたサーバー、ラウドベースのオンリアンサービスなどである。

2003年に設立され、売り上げ高は、少し古い情報だが11億500万円(2018年12月)、従業員数は、4,181人[1]。ユーザーは世界で500以上。米国調査会社ガートナーから10年連続で「アナリティクス/BIプラットフォーム」部門のリーダーとして選出[2]されている。2019年には、セールスフォースの傘下に入った。

BI市場で顧客から最も信頼されているTableauの分析プラットフォームは、データの探索と管理を簡単に行い、ビジネスや世界を変革する可能性がある情報、知見を迅速に見出して共有することを可能にする。その製品は、アナリスト、データサイエンティスト、学生、教員、エグゼクティブ、ビジネスユーザーと、あらゆる顧客のために設計されている。Tableauは、接続からコラボレーションまでをスムーズに行える、強力でセキュアかつ柔軟な、エンドツーエンドの分析プラットフォームである。

Tableauは、スタンフォード大学のコンピューターサイエンスプロジェクトから、データ分析フローを改善し、ビジュアライゼーションを通じて人々がデータをさらに有効活用できるようにすることを目的にして誕生した。ここで、Tableauは、基盤テクノロジーであるVizQL[3]を開発した。これは、直接視覚に訴えるユーザーインターフェースにより、データを、顧客に直感的に表現し理解させる技術だ。データから答えを短時間で引き出して価値ある知見を引き出す。AI、機械学習、統計、自然言語、スマートなデータ解析を実用化し、ビッグデータ分析を行う人間の能力を大きく拡張する。統合的な分析プラットフォームを提供するだけではなく、顧客が説得力ある分析結果を通じて価値を高められるデータドリブンな文化を導入、規模拡大できるように支援する。

DXを実現するために、Tableauの製品を使い、データ活用を推進した企業の一つが日本ケンタッキーフライドチキン(KFC)である。周知のようにKFCは日本国内に 「ケンタッキーフライドチキン」を提供、1,150 店舗以上を展開、店舗経営のために集められる情報は膨大だった。

KFCは、2015年にデータ戦略企画課を設置。2019年5月に営業向けのデータ集計分析環境構築プロジェクトを発足させた。2020年5月より順次直営店舗管理用、フランチャイズ店舗管理用のデータダッシュボードを展開。日次、月次等目的に沿った粒度の高いデータ帳票が提供された。マーケティング向けに、2019年12月に CRMデータダッシュボード、2020年9月に顧客調査ダッシュボードと、各種ダッシュボードを開発した。

2020年10月には データ・マネジメントツールを導入し、2021年5月にマネジメント向けレポートを作成、2021年11月に部門横断で活用するレポート類のデジタル化が行われている。データソースは、POS データや店舗運営に関する各種データ、マーケティング関連データなど多種多様である。これら多様なデータソースから クラウドにデータを取り込み、データ加工。一連の処理は、データマネジメントツールによりリアルタイムで更新、レポート化されている。

KFCにとって、DX推進の結果、データ集計・分析の作業負担軽減、重複したルーチンワークの削減、大量データの一括分析、データ活用サイクルの高速化、データ活用に対する意識の劇的な向上が図られた。今後は、営業・マーケティング以外にもDX推進を拡大し、店舗開発部門などでも導入を計画している。サプライチェーン関連のデータも分析可能にする。また、マネジメント層での利用拡大も推進。データ分析の目的を集計や分析そのものではなく、データで議論しながら、幹部の事業戦略の意思決定を行うことに注力しつつある。[4]


3.さいごに

Tableauは、自ら同社の5つの強みを、下記のとおり指摘している。[5]

  • 最も頻繁なイノベーションサイクル、最新の技術を持っていること
  • 接続できるデータソースが最も多いこと
  • 最も使い易いこと。Tableauでは、米国のアニメーション制作会社Pixarの創業メンバーのひとりが創業者に名を連ねており、卓越したビジュアライゼーションが強み
  • 展開の柔軟性、いかなるデジタル環境(クラウド有り無し問わず)でも使用可能
  • 最も大きく活発なユーザーコミュニティを持つ

DXの推進は、一社、一組織で完結するものではなく、多様なステークホルダーで構築されるエコシステムの重要性が指摘されている。上記の最後にあるように、DXを支援するTableauもまた、大きく活発なユーザーコミュニティ(記事ではおたくたちと呼ばれている)を、DX支援の強力な推進力としていることに我々は注目するべきであろう。


  1. https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/DATA
  2. https://www.imagazine.co.jp/gartner-abi-magic/
  3. ユーザーによる操作をデータベースに変換しその結果を目に見える形で表現する、特許取得済みのデータベース言語
  4. https://www.tableau.com/ja-jp/solutions/customer/kfc-data-from-variety-of-sources-into-tableau-cloud
  5. https://it.impress.co.jp/articles/-/16079

特定非営利活動法人 日本PFI・PPP協会
DX主任研究員 飾森 正